桜の名所で有名な吉野山もある奈良県吉野。実は500年もの歴史を持つ全国有数のスギやヒノキの名産地でもある。
日本の人工林が抱える問題
──木を切ることが環境保護に繋がるってピンとこないのですが、日本の森の環境って今どんな問題を抱えてるんでしょうか?
木村:日本の森は、戦後の政策によってスギやヒノキ等の針葉樹が植えられた人工林が多くあるのですが、自然に生えている天然林と違って材として加工することを前提にまっすぐな木を育てるため、本数を多く、密に植えられています。そのため定期的に木を間引(間伐)してあげないと良い木が育たず、また光が樹の根元まで届かないことで、草や他の植物も生えなくなり保水力が落ちて雨が降ると土砂崩れの原因となったりして大変危険なんです。また、間伐した材も含めて使うことが大切なのですが、私たちのライフスタイルの変化や海外から安価な材が手に入るようになったことで日本の木を使う機会が減り、人の手が入らない森が増えているという問題があります。
人の手が入らないため、密生した状態の森
“間伐”の体験活動の様子
──へえ~、森って人工のものと天然の森があるかなんて意識していませんでした。人工の森って木を切ってあげないと森にとって良くないんですね。
木村:そうなんです。EFFでは吉野中央森林組合や企業・市民の方の協力を得て2002年から台風被害跡地での植樹を、2006年から併せて"間伐"の体験活動を行っているのですが、体験活動だけでなく、日常の中で間伐材を使って、森の現状を知って身近に感じてもらえるような接点を作りたいと思っていたのが「結糸」を企画したきっかけになります。
──なるほど、森の環境を維持するために間伐された木から生まれた布ということだったんですね。でも木から糸を作るって手間がかかりませんか?木の素材をそのまま使った家具のようなものの方が簡単に加工できるような気がしてしまいます。
木村:確かに手間も時間もかかります。たとえば、木の用途を日常に落とし込んだ時に家具や家が思い浮かぶと思うのですが、あまり購入頻度の高いものではないので限られた機会しか手にすることができませんよね。できればもっと気軽に手にとってもらえるような商品を作ることで多くの人に森の現状を知ってほしいと考えていました。そんな時、ある展示会で大阪のはんなん和紙の布工房協議会さんが木から作られた布の存在を知り、この方法なら吉野の間伐材を原料にして、木を身近に感じてもらえるアプローチができるのではないかと思ったんです。
「木をつむぐ」
──確かにこんなブックカバーやペンケースなら気軽に贈ることができますね。
無漂白で素朴な風合いが魅力 桜とスギ・ヒノキの色をイメージした2色展開 (design by STUDIO BYCOLOR)
「自治体特選ストア 吉野」で販売中
木村:ありがとうございます。
人工林の現状を考えると負の遺産と捉えられがちですが、木って先人達からの贈り物だと思うんです。当時の人が想いを込めて植えたことを考えると大切により良い形で次の世代に繋いでいけたらと。そのために森がより身近になっていろんな方に間伐材を使ってもらうことで森の環境維持と木の消費のバランスが持続可能なものになってくれたらと考えています。
──そのために人と森を繋ぐ役割を担っているのが『結糸』というわけですね
木村:その1つになってくれるとうれしいですね。笑
EFFでは、森の環境を守るために木を加工して作られた布を使った商品『結糸』を企画・販売しています。
「NPO法人地球と未来の環境基金(EFF)」
2000年設立。「森を守る」ことを軸に国内・海外での環境保全活動やバガス(非木材紙)の普及、企業・行政等の助成金・補助金プログラム支援による環境保全団体の活性化という4つの側面から事業を展開。
市民活動と企業・行政等の多様なセクターを繋ぎ、暮らしや経済活動の中で市民が参加できる具体的な活動や事業を提案している。活動団体のサイトを見る
この記事のおさらい
- 地球と未来の環境基金
- 結糸 すべての対象商品
- 商品を購入する
- 間伐材使用で森林保護
- 日本の森
- 間伐された木を原料に布を作って森林保護につなげる